触れない君
ここ数年めっきり運動しなくなり
怠慢な日常が私を豚へと変身させている。
5年で10キロ増えた。
5年で10kgだ。
グラムで言うと、10000グラムもデブったのである。
このままではいけない!
運動しよう。時間なら腐るほどある。
私は無職だ。
ジムにいくのはカッコいいが、体重を減らしたいだけなのに
財布まで減らしてどーすると突っ込みを入れる。
走るのはきついから5分も続かない。
基本的に歩くのは好きなので、ウォーキングをすることにした。
自宅から徒歩1分のところに立派なトラックがある。
それを、今まで見て見ぬふりしていた。
ここは私の居場所ではない、と。
だがこれからは違う。
今からここが、私の舞台だ。
歩く。すいすい進む。
よし、行くのだ私!じゃんじゃん進むのだ!!
運動後約20分から脂肪が燃焼され始めると言われる。
いきなり頑張って、走ってもないのに膝を殺られるという辱しめにはあいたくないので
手始めに1時間歩くとしよう。
ただ、チンタラ歩くのは私の美学に反する。
シャキシャキ、がしがし歩きたいのだ。
歩いているのに心拍数ばくばく。
これぞ運動。
私はひたすら歩いた。
仲良し女子2人組がキャッキャ話しながらチンタラ歩いているのを横目に
私はそれを、秒速で追い抜く。
私は今、風になった。
やるからにはガッツリ行きたい。
メッチャはぁはぁ言いながら、
走った方が逆に楽なんじゃないかという冷静な判断をも払拭し、風の如くフィールドを舞った。
はぁはぁ…
はぁはぁ はっ… はぁはぁ
私は風である。
やりきった感に身を包み、
汗だくの体と重い足を噛みしめつつ帰路へ。
はぁはぁ…こんだけ歩きゃあ3kgは軽く減っただろう。
しっかり汗かいたし。滝の如くやし。
減量なんてメッチャ余裕☆
私は確信を持つと、意気揚々とバスルームへ
・・・あれ?
100gすら減っていない。
ありのまま、そのままの私だ。
はぁ、体重計よぉ…
ちったぁ空気読めや。
ここは1kgでもメモリを左に動かすとこでしょ!?
一気にやる気が落ちた。
ただ、私には時間がある。腐るほどある。
なにせ、私は無職だ。